karashi39とはいったい

夢と希望と明日と正義を讃える

少女漫画「ジョージィ!」がイカれてなかったので感想

私が幼かった頃、家にやってきたいくつかの文化的品物。「レッドドルフィンズ」のCDアルバム、「ドラゴンボール」全巻、「キャンディキャンディ」愛蔵版に加えて、「ジョージィ!」愛蔵版。経済的にも文化的にも貧しく育った私にとってそれらはペルリ提督的な存在だったのだけど、「ジョージィ!」は特に異様な作品で、大人になっても理解できないまま約20年が経過してしまっていた。実は数年前に買い直していて、その当時も理解はできなかったのだけど、最近色々な作品に対する見方がいい感じになってきたので、この度「ジョージィ!」も読み直してみました。

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あらすじ(シナリオ)

ヴィクトリア女王の時代である19世紀、イギリス領だった頃のオーストラリアが舞台。黒い髪の兄弟アベル、アーサー、そして金髪の妹ジョージィ。3人は広大なオーストラリアの日差しの下に育つ。

ジョージィが14歳になるころ、先立って船乗りになっていた長男アベルがオーストラリアに帰ってくる。迎えに行くジョージィが出会ったのは、イギリス人であるオーストラリア総督の孫、美少年ロエル。ジョージィとロエルが恋に落ちることで、兄弟の仲が引き裂かれる。実は血がつながっていないジョージィに、長男アーサーが兄弟の関係を超えた強い想いを寄せていたからだ。

なんだかんだでジョージィはイギリスに旅立ち、長男アベルは追ってイギリスに向かう。いろいろあって男装しているジョージィは9歳の少女キャサリンの恋心を利用する感じでうまい具合にイギリスに到着し、住む場所も確保する。この過程で色んな人が死ぬ。

ロエルの婚約者エリーズが、二人の仲を引き裂こうとする。アベルも色々と邪魔をする。二人は駆け落ちし、ジョージィはロエルの愛を信じる戦い、ロエルは絹のシャツを脱いだ暮らしとの戦いをする。すぐにロエルは病気になって、ジョージィが頑張ってなんとかしようとするが無理、結局二人は結ばれずに終わる。

突然、弟アーサーがケインという偽名でイギリスに来ていることが判明する。ケインはロエルのいとこであるホモ貴族アーウィンに気に入られ、ついでに麻薬漬けにされていた。
ジョージィとアベル(兄)がアーサー(弟)を救出するために、まずはアベル(兄)とアーサー(弟)が入れ替わる。後日、当然アーウィンが入れ替わりに気づくが、物の弾みでアーウィンがアーサー(兄)に殺されてしまう。アーサーは助かったはずだが、禁断症状のため川に落ちて死亡。

アーウィンの父であり、実はジョージィの本当の父を陥れた張本人である極悪貴族ダンゲリング公爵は、カイン(この時点では兄アベル)の処刑を決行しようとする。
アベル(長男)を助け出そうとするジョージィは、牢屋の中でアベル(長男)と結ばれ一発で身ごもる。 結局アベルの処刑は実行されたが、同時にダンゲリングの悪事が白日のもとにさらされ、ダンゲリングは逮捕される。

アベルの子供が生まれ、実の父フリッツ・ジェラルド伯爵と幸せに暮らはじめたジョージィ。アベルの設計した船が完成したので、そのレディ・ジョージィ号に乗ってオーストラリアに帰ったジョージィは、死んだはずのアーサーと再会し、長男アベルの息子アベルジュニアと3人で幸せに暮らすのだった...。

アバズレ女のストーリー

ひどい言いようだけども、この作品を読んだときの異様さは、主人公ジョージィのアバズレ女という印象に集約されます。なぜそうなるのかというと、私が男だからですね。男目線で見ると、やはり男のキャラに感情移入するのだけど、単行本4冊くらいの間にジョージィは色々な男と度々何かをするので、一途という印象を全く持てず、なんだこのビッチはという気持ちになるのだった。ジョージィの恋愛年表を書いておきます。

とき できごと
アベルが帰ってくる日の朝 ジョージィ(14)、下着姿でアーサーに出くわす
アベルを迎えに行く道中 ジョージィ、金髪の美少年と出くわし、裸にひんむく
アベルを迎えに行ったら ジョージィ、彼女といちゃついているアベルに出くわし、アベルは彼女をほったらかしでジョージィと去る
アベルと雨にふられながら アベル、雷に怯えて抱きつくジョージィを、そのまま押し倒す(押し倒しただけ)
ブーメラン大会にて ロエル、優勝したジョージィにくちづけをする(一方的)
家に帰ってから ジョージィ、恋心に気付く
ブーメラン大会の数日後 ジョージィ、ロエルと再会し、胸がパッカリあいた服でロエルを困らせる
その日のうちに ジョージィとロエル、二度目のくちづけ(合意)
ロエルが帰国を告げに来た雨の夜 ジョージィとロエル、洞窟で逢い引き、くちづけ
真実を知ったジョージィが川に落ちて 助けたアーサー、裸で重なりジョージィを温める
助かったジョージィ アベル、恋心をジョージィに打ち明け、くちづけ
イギリス行きの船に乗り込もうとする過程で 男装したジョージィ、9歳の少女キャサリンを手なづける
イギリス行きの船の上で キャサリン、ひたすら男装したジョージィにまとわりつく
イギリス行きの船の上で 海にキャサリンが落ち、ジョージィが飛び込んで助ける
イギリス行きの船の上で 男装がバレるジョージィ、女でも気持ちを変えないキャサリン
ロエルの屋敷で 下着姿のジョージィ、ロエルと再会
ロエルの屋敷で 裸にバスローブのジョージィ、ロエルに押し倒され(押し倒されただけ)、くちづけ
駆け落ち先で ジョージィ、子供の作り方を教えてもらう
駆け落ち先で ジョージィ、子供の作り方を教えてもらったことをロエルにわざわざ報告
駆け落ち先で 雨を避けるために入った小屋で、二人とも裸で一緒に寝る(一緒に寝るだけ)
ロエルの病気が治らなくて ロエルの意識がないうちにロンドンに置いてくるジョージィ
アーサー救出作戦にて アベルジョージィの頬にくちづけ
アベル救出作戦にて ジョージィ、アベルの子供を身ごもる
アベルの死後 ロエルがやってきて、今は幸せに暮らしていると告げる
オーストラリア帰国後 アーサーに再会、幸せに暮らす

どうですかね、こんだけロエルとの恋愛を描写されたら、ロエルに感情移入して読んでしまうのは仕方がないし、仕方がないとはいえロエルを捨てた同じ巻の中で別の男の子を身ごもり、さらに別の男と幸せに暮らすという展開をみたら、言い方が悪かろうとアバズレという印象を抱いても仕方ないと思うんですよね。

しかし、本当のジョージィはロエルとの恋愛物語ではないのだった。

ジョージィ!」は、少女視点の「タッチ」

この2作品は、ほぼ同時期に発表されていた作品なのですが、タッチが男目線で女の子を兄弟で取り合う話なのに対して、ジョージィは女目線で二人の男をどうするか、という話なんですね。このことは、物語の冒頭で説明されています。

ジョージィの初恋の相手がロエルだからわかりにくいんですが、この作品は、この3人の三角関係が中心なんですね。

浅倉南を愛する上杉達也は、弟和也の気持ちや死を乗り越えて、南を自分だけのものにしていく、というストーリーなわけです。が、女からこれを観たらどうなるのがハッピーエンドなのか、という一つの答えを出したのがジョージィという作品なのだった。

アベルは、非常に独占欲が強い男です。独占欲が強すぎて、ジョージィが生まれの真実を知る何年も前から、もう手を出したくて仕方なくなってしまったので、物理的にジョージィから離れるために船乗りになって海外に行ってしまいます。ちょくちょく帰ってくるオーストラリアでは、ジョージィへの想いを抑えるために苦労する。一方、弟アーサーは自分の気持を隠し通して、ジョージィとアベルとの幸せな家族愛を守っていた。この関係を壊そうとするなら、兄だろうと母だろうと許さない。

このキャラクターが立った時点で、3人が幸せになる道は物語のラストのように、兄アベルが死に、兄アベルの子供とジョージィ、アーサーが3人で暮らす、という形しかない気がします。アベルとアーサーの立場が逆だったら、男としてジョージィを独占したいという思いが強い兄アベルは狂い死にしてしまうと思う。
一方、独占欲はそこまで強くなく、家族愛の強いアーサーは、兄の子供と一緒にジョージィと家族として幸せになることができます。
アベルは、一度きりでもジョージィと結ばれ、自分の子供を身ごもらせ、しかもジョージィのために死ぬわけですが、彼はそれが幸せと感じられる男です。 ジョージィも結果的に二人の男を手に入れたような形で、この3人にとってはこれ以上ないハッピーエンドになっている。

上杉和也のように、何も報われず噛ませ犬のように死んでしまい、しかも兄の恋の障害になってしまう...みたいな不幸人間はこの家族の中にはいません。いるとしたらロエル。婚約者やその家族、女王陛下の信頼すら裏切って駆け落ちしたジョージィとは自分の病気のため別れなければならず、その後命を救われたという言わば足元を見られたような恩のために人生を捧げているロエルは、そういう幸せの形があることは否定しませんが、自由がないことも間違いない。

ロエルはなんで出てきたのか?

これは、ひとえに舞台をイギリスに移すための装置としか言いようがない。オーストラリアから出発して、イギリスでジョージィがアベルの子を身ごもり、アベルは死に、オーストラリアでジョージィとアーサーが再会することが、ハッピーエンドに向かうための必要条件です。どうしても3人はオーストラリアからイギリスに行かないといけない。

そのために用意されているのが、イギリスでの事件のストーリーです。時系列で整理してみました。

あらすじ(プロット)

とき できごと
むかし ソフィア・ジェラルド、フリッツ・ジェラルド伯爵の子を身ごもる
むかし ダンゲリング伯爵が麻薬商売で権力を狙っていることにジェラルド伯爵が気づく
むかし 気づかれたことに気づいたダンゲリングの陰謀でジェラルド家お取り潰し
むかし 逃げそびれたソフィア、生まれたジョージィとともにオーストラリアへ流刑
むかし バトマン一家がジョージィたちに出会い、ソフィアは死亡、ジョージィはひろわれる
ちょっとまえ アーサーが船乗りになり家に出ていく
第1巻 ジョージィとロエルの出会い、ロエルはイギリスに帰る
第2巻 ジョージィがロエルを追ってイギリスへ
イギリスにてアベルジョージィ再会
ひっそりイギリスに行っていたアーサーはアーウィン・ダンゲリングに捕らえられ薬漬けに
第3巻 ロエルとジョージィが駆け落ち
アーサー、ケインとして兄弟と再会
ロエルとジョージィの別れ
第4巻 父フィッツ、ジョージィと再会
アーサー救出作戦
アベル救出作戦
アベルの処刑、ダンゲリングの悪事が暴かれる

こうやって見ると、ロエルは本当にかわいそうな役柄です。それだけだと悲しいので、ロエルとの恋愛はわざと熱く描かれているのかもしれないと思いました。

ジョージィとロエルの恋愛

この二人の恋愛は前述の通り、ジョージィはロエルの愛を信じる戦い、ロエルは絹のシャツを脱いだ暮らしとの戦いです。

まず、ジョージィの戦いですが、ジョージィを愛するアベルやロエルを取り戻そうとするエリーズは、基本的に愛の信用を崩す作戦で攻撃してきます。信用崩し作戦も、嘘をベースにしたものでは、あまり効果がありません。だから事実ベースで、不安を煽るようなことをいっぱい言ってくるんですね。たとえばアベルは、(ロエル婚約者エリーズが一方的に)結婚式の予定を早めた事実をベースに、ロエルの愛は信用ならん、と言ってきます。エリーズは、ジョージィが流刑囚の子であることを根拠に、ジョージィの心を揺さぶってきます。ただ、二人の愛情が強いので、そのあたりは苦しみながら克服していくんですね。

つぎに、ロエルの戦いは、結構厳しいものです。貴族ではないものの、貴族同然に育ったロエルは、駆け落ち先の下町の生活になじめません。不潔だし、住みにくい。友達もできない。しかし、その苦しみもジョージィが救ってくれます。彼女の力で、暮らしも多少豊かになり、自分が高貴な出と知っても関係なく親しくしてくれる人たちにめぐりあいます。なにより、下町暮らしが辛いロエルにとってのジョージィの言葉は、愛する相手だけいれば良いという確信を支えてくれます。

これは、ジョージィの価値観を象徴したシーンです。桜草はジョージィの今までの暮らしの象徴です。基本的には、生きていく上でいかなるものも必要とはしていないというのが、ジョージィの価値観でした。しかし、今は違って、ロエルさえいれば良いという気持ちに変わっています。このことが、ロエルをかなり支えてくれている。ジョージィは下町の暮らしがとても好きに見えるけども、いざとなればロエルだけいればいいと思ってくれている。だから、ロエルも下町の暮らしはとてもつらいけども、いざとなればジョージィだけいてくれればそれでいい、と思えるようになっていくんですね。

というわけで

こういう、恋愛漫画としてははロエルとの関係が中心に大きく描かれているので、大枠にはストーリーのための犠牲になってしまうロエルにあっさり感情移入していた幼い私は、その後の展開をみて、なんだこのクソみたいな女は!?という気持ちになったのですが、本来はロエルこそが他所から来た邪魔者で、一緒に育った3人が大人になっても一緒に幸せになることが、「ジョージィ!」の一番のテーマなのでした。

でも私は、ジョージィとロエルの、誰も覆せない信頼関係が好きです。できればあのまま幸せになってほしかった。それだと漫画にはならないのでしょうが...。